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有機農業的本づくり

有機農業的本づくりのすすめ。書志「街から舎」の目指す出版とは?

本が売れないという話を最近よく耳にします。実際にそういうことらしい。でも、大型書店に行くと、新刊書が溢れんばかりに並んでいます。 だが、一週間後に出かけると、もう多くの一週間前の新刊書は姿を消しています。 それらの本は売れないので棚からおろされてしまったのか、それとも新しい本が毎日次々に出されるので、早々に交替をさせられてしまうのか、よくわかりませんが、ともかくすでに消えていてありません。これが目下の出版の状況です。
このような現象がなぜ生じているのでしょうか?

端的にいえば、現代においては、本の出版もすっかり他の産業同様にマスプロ化した商業製品のように生産され流通で捌さばかれ消費される仕組みに組み込まれてしまっているからです。 しかし、よく考えてみましょう。本が売れないということですが、生活必需品でもない本が、生活必需品で大量生産されているような製品同様にたくさん売れるはずはないのです。 また、昔は、本が唯一といっていい重要な知的・文化的情報源だったわけですが、現代は本に代わる情報源がたくさん出現しています。

元々まともな本を読む読者層などは微々たるものだったのですから、それを出版もビジネスだと意気込んでみても、高が知れていたことが漸く自明になってきただけではないでしょうか。

出版と同様に、農業もまた市場経済に組み込まれ一商品と化し劣悪な事態が生じていることはご承知のとおりですが、近年、有機農業を手がける農家やこれらの農業者と消費者を繋ぐ有機的なシステムも構築されつつあり、その普及が期待されています。

本来、出版も農業もきわめて効率の悪い、非産業的な仕事なのです。農作物も著作物も単なる売るための商品ではなく、その作り手が生命を営むために食し愉しむものでもあります。つまり両者は、必要度こそ異なりますが、人間にとって根源的な必需品ではないかと、私たちは考えております。

というわけで、私たちは、出版本来のあり方――すなわち《農耕的本づくり》の復興を志しています。むろん、目指しているのは《有機農法的な本づくり》であることはいうまでもありません。 農業の基本は、自分たちの食物を自分たちの手で作ることだったはずです。本も、自分たちの本当に読みたい本、記録に留めておきたい本を、自分たちの手で創っていくという喜びがあっていいのではないか。

ただし、単に本を創るだけではなく、それを読んで喜んで貰える人々にも出会いたいものです。いい農作物を作るためには、いい土壌づくりが必要だということを、お百姓さんは知っています。 同様に、いい本を創っていくためには、いい読者層の掘り起こしや、《産地直送》システムの構築が不可欠です。街から舎の出版活動は、そういうムーブメントでもあるのです。

株式会社「街から舎」
代表取締役・本間健彦