ホーム > 編集室から > シティーライツ・ノート > シティ・ライツ・ノート/目次ジャン・ユンカーマン監督「第9条を世界へ輸出しよう!」ドキュメンタリー映画監督/佐藤真さんの死須賀敦子さんの,イタリア版「傘がない」 高田豊と石川三四郎

須賀敦子さんの,イタリア版「傘がない」 

須賀敦子さんの,イタリア版「傘がない」

☆須賀敦子さんの「雨のなかを走る男たち」(『トリエステの坂道』所収‥新潮文庫)というエッセイに、こんな一文がある。
「イタリアで暮らすようになって、ひとつ、びっくりしたことがあった。学生をふくめて、生活がぎりぎりという階級の男たちが傘をもっていないのだ。(中略) イタリアでもすくなくとも二十年ほどまえまで、傘は一種の贅沢品だったのではなかったか。だいいち、傘屋というのが街にない。どこで売っているのだろう。そんなわけで、にわか雨にあったとき、上着の前を手で閉めて走る人種と、そうでない人種にわかれる。」
須賀さんのこの本が刊行されたのは1995年だから、その20年前というと70年代中頃までの話ということになるが、今はどうなのか?現イタリア在住の神田真理子さんに尋ねてみようと思っているうちに締め切りがきてしまった。
☆ところで、前記のエッセイには、著者がイタリア人の夫と結婚してまもないころ夕方にわか雨が降ったので市電の停留所まで傘をもって迎えに行くと、電車から降りて来た夫は、視線が合った筈なのに知らん顔をして通り過ぎ、雨のなかを両手できっちり背広の前を閉めて走っていった、というエピソードが綴られている。そして彼女の夫は書店に勤める優れた知識人であったけれど、下級鉄道員の家庭に育ったという出自であったということも。
☆わたしたちの国では、20年前から誰もが傘を持っている。なのに格差は広がるばかり。私事ですが、父の日に娘から英国紳士が持つような傘をプレゼントされた。でも失くしそうなのでまだ使っていない。さて、この89号が出る頃は、参院選も終り、梅雨も明けているのでしょうが…。 
        
(2007年8月『街から』89号)

日時: 2008年05月09日 23:01

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