139号編集室から

  • 2016.02.04 Thursday
  • 11:54
JUGEMテーマ:コラム

☆『大地を受け継ぐ』(井上淳一監督作品)というドキュメンタリー映画を観た。2011年3月24日、福島第一原発から約65厠イ譴進‥膰須賀川市で農業を営む樽川久志さんが畑の傍の山林で自死を遂げた。前日、関係先から収穫期を迎えていたキャベツの出荷停止を伝えてきたFAXを読み、「福島の農家は終わりだ!おめえに間違った道を進めてしまったな」と青ざめた表情で息子の和也さんにつぶやくように語ったのが、最期の言葉だったという。このドキュメンタリー映画は、息子・樽川和也さんと(40)と母親・美津代さんの二人が、原発事故に遭遇し今日まで生き抜いてきた4年間の自分たちの暮らしの状況とその万感胸に迫る思いを、東京からやって来た男女十一人の若者たちに語り聞かせるという手法で描かれている。ちょっと説明すると、農家の樽川家の座敷に長方形に並べられた座卓を囲む若者たちのまえで、樽川さんが語り、その言葉に、聞き手の若者たちがしだいに心を動かす表情がさざ波のように広がっていく、そんなシーンの映像で構成されていて、ドラマチックなシーンの全くない、ドキュメンタリー映画としては異色の作品なのだ。じつにシンプルなドキュメンタリーなのだけれど、心打たれ揺さぶられた。それは樽川さんが静かに淡々と語る、たとえば「これは風評じゃない、現実だ!」という言葉に、絶望的な現実の中で生きる人間の凛とした精神と存在感が認められたからだろう。監督の井上淳一さんは「言葉を撮ること――言葉を語る彼を撮ることで、言葉の向こう側にあるものが想像できるのなら、それこそが映画ではないか」と制作意図を語っている。ドキュメンタリー映画は、既存のジャーナリズムが失った機能を担っている、現代のジャーナリズムなのだな!私は、この映画を観ていて、そんな思いもつよくしました。


☆憤りを表にださないような静かな語り口が印象的だった樽川さんなのだが、「あのバカが!」と唯一激する声と表情を見せたシーンがある。それは高市早苗総務大臣が、ある講演で「東京電力福島第一原子力原発発電所事故で死者が出ている状態ではない」と語った言葉に対しての反応だった。福島第一原発事故に伴う災害関連死として認定されている死者数は既に1400人を超えているというのだ。総務大臣が、その事実を知らないはずはないのだから、この女性大臣の発言は、原発再稼働を正当化するための詭弁だったのだろう。批判を浴びて発言を撤回したそうだけれど、言葉の軽さ、実体のなさには、あきれかえるばかり。もっともこの大臣の上司にあたる安倍晋三首相は、東京オリンピック招致のプレゼンテーションで「フクシマについて,お案じの向きには、私から保証いたします。状況は、統御されています」という趣旨の演説を英語でおこない、堂々大詭弁を弄している。もし「ウソも方便」などと嘯いているのなら、いよいよもってヒトラー並みの大危険人物と警戒しなければならない。


☆「戦後70年」といわれた今年、この国で起きた最悪の事態は、「戦争法案」と多くの人が憂え反対した安全保障法案が茶番劇的なセレモニーを経て、遂に国会で可決されてしまったことだろう。これは戦後の日本が礎にしてきた平和憲法が詭弁を弄して改ざんされた一件だった。けれども、単に詭弁と批判するだけでは主権放棄に過ぎない。民主主義の制度を健全に機能させていくためには、市民各自が権力者の言葉の真贋を見抜く力をつけ、詭弁を弄する輩を権力者に選出しないという権利行使が不可欠に思えるからです。

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